こんな方におすすめの1冊
- ソニーを以下にしてV字回復させたのか知りたい。
- リーダー像について悩んでいる。
- エリートコースではないけど出世はできる?
今回ご紹介する本は、平井一夫氏著「ソニー再生ー変革を成し遂げた異端のリーダーシップ」です。
本書の著者、平井一夫氏はソニーで2012より社長兼CEOを努めソニーショックを乗り越えてソニーをV時回復させてカリスマ経営者です。
ソニーの音楽グループ企業であるCBS・ソニー(現ソニー・ミュージックエンタテイメント)入社後、ソニー・コンピュータエンタテイメントアメリカやソニー(現ソニーグループ)にて3度のターンアラウンド(事業再生)を行い、ソニーグループをV字回復させたことでビジネス会で非常に有名な方です。
平井氏が社長勇退後もソニーは2022年度連結業績にて、売上高が前年比116%増の11兆5398億、営業利益は同59億円増の1兆2082億円となり、いずれも過去最高だった2021年を更新しています。
そのカリスマ経営者が経営から離れ、会長職になられてからソニーでのキャリアと3度のターンアラウンドについて書かれたのが原著「ソニー再生」です。
結論|Take Home Message
この本が伝えたいメッセージ・結論は以下に集約されていると感じました。
平井氏が考えるリーダーとして大切な資質を述べられています。
Take home message
- 「はたして自分は部下から選ばれる存在だろうか」ということを常に意識し自問しておほしい。
- よく経営者はコミュニケーション能力が高くなければ行けないと言われる。それだけではなく、知能指数を示す「IQ」ではなく「EQ」、すなわち心の知能指数が高くなければならないと考えている。「この人なら考え方が違っても自分の意見を聞いてくれるはずだ」と思ってもらえなければ、本心から「異見」を得ることはできないからだ。
家電事業など屋台骨となるソニー母体とは違うグループ企業からキャリアをスタートさせたリーダーならではの言葉ではないかと感じました。リーダーといえど、何でも知っているわけではないし、考えは100%あっているとは限らないということを非常に謙虚に捉えられているからこそ出てくる言葉だと思いました。
また、平井一夫氏はリーダーの必要な資質として「方向性を決めること。そして決めたことに責任を取ること」をあげられています。そのうえで、平井一夫氏は異見をぶつけあることを非常に大切にされていたと述べられています。その異見がでる雰囲気作りの前提になる小がけを挙げられています。
異見を引き出す前提
- 第一に、リーダーはまず聞き役に徹すること。私は会議ではなるべく発言しないようにしていた。特に冒頭はなるべく発言しない。リーダーの立場にある人間が話し始めると、その場にいる人たちがどうしても聞き役に回ってしまうからだ。
- 第二に、期限を区切ること。私は結論の出ない会議というものが嫌いなのだが、一度の会議で結論が出ないこともある。そんな場合は「いつまでに何をアップデートする」と、その場でしっかりと決めてしまうことだ。
- 第三に、これがリーダーの役割になるのだが、最後はリーダー自身の口で方向性を決めること。そして、一度決めたらぶれないこと。「私が責任を持つ」とストレートに伝えることだ。
おすすめ度
(5.0 / 5.0)
私が星5だと評価したのは、平井一夫氏の行動に強く共感したからです。
経営者というと雲の上の存在と捉えられがちですが、平井一夫氏自身も一社員のときに感じた社長像を崩すべく、社員に非常に近い存在であろうとしています。ソニーグループの世界中のオフィスに行き、社員と同じテーブルでランチを囲みながら社員の言葉を聞いいていたと言います。
現場の声を徹底的に聞く姿勢、そしてウォークマン、プレイステーションから引き継がれる技術力の高さ、世界を変える技術アイデアを最大限に引きだそうとされていることに非常に尊敬しました。
自社の社員を信じ、自社の持っている技術を信頼するということは当たり前なのですがなかなかできることではないと思います。
この本を出会ったキッカケ
テレビ東京のYouTube番組である「テレ東biz」にて紹介されていたのを観ており、Kindle unlimitedで読めるようになっていたのがキッカケになります。
テレ東bizの動画では本著がわかりやすくまとめらられ、さらに「傍流」について考察されています。ぜひ合わせて御覧ください。
Doktor Nakanoの着目ポイント
本著を読んで、平井一夫氏がどうして異端のリーダーなのか、そしてソニーが再生できた理由という点で、着目したポイントを2つあげたいと思います。
その2つは
- 平井一夫氏の生い立ち
- 心理的安全性環境の醸成
どうして平井一夫氏は異端のリーダーになれたのか(なったのか)?
私が「ソニー再生」を読みながら平井一夫氏がどうして異端のリーダーとなれたのか?または、リーダーになる過程で日々どのようなことを想い、考えながら仕事を行っていたのかとても興味が沸きました。
本著でご自身でも自己分析されているので確信に近いとは思いますが、その一つのヒントとなるのは平井一夫氏の生い立ちにあります。
本著の冒頭で平井一夫氏の生い立ちについて触れられています。
小学生のころに父親の仕事の関係でアメリカニューヨークに引っ越します。偶然にも私もニューヨークにいたときに住んでいたクイーンズ地区でした。
本書に出てくる土地を知っていることもあり、いた時代は違えど(平井一夫氏は1970年代、私は2016〜2018年)、アメリカという土地での戸惑いやアジア人であることで惨めや差別のようなことも経験されたかもしれません。1970年代は今よりももっとアジア人への偏見は強かったかったと思います。
またアメリカは人種のるつぼ。さらにアメリカの中でもリベラルな街ニューヨークなのでさまざまな人種の人が同じ街に住んでいました。
そのような環境で現代の日本でよく謳われている「多様性」をいい意味でも悪い意味でもすでに幼少期から経験していたことは、平井一夫氏のビジネスでのマインドセットに大きな影響を与えたのではないかと思いました。
すでにビジネスパーソンとなっている方で、幼少期に海外に住むことは帰国子女でない、日本で生まれ育って海外に住んだこともないという方でも、今からでも、何歳からでも短期間でもいいので海外に行って日本とは違う文化や習慣にふれるのもいいと思います。
海外に行かずとも、そもそも日本人同士でも見た目は同じ黄色人種でも性格や考え方は人それぞれ違うという当たり前のことを知るだけでも普段の生活や、仕事において気づきが得られると思います。
心理的安全性環境の醸成
もう一つは、上記の多様性を身をもって知っていることに起因しているからかもしれないですが、平井一夫氏は本書の中で社員の現場の声を大切にし、その声を発言し易い環境にしてこられたことを何度も本書で語られています。
これは今で言う、「Speak up」と「心理的安全性」の文化の醸成にほかならないと思います。
本書ではこれらの言葉は出てこないですが、平井一夫氏はこれらの社内風土に直結する風土の醸成を心がけておられたのが、ソニー再生にとって重要なポイントだと個人的には感じました。
この「Speak up」と「心理的安全性」の環境の構築を社長就任時の2012年より前から行っていたというのは、ようやくこの心理的安全性という言葉が浸透しつつあると感じる2023年の今の日本の社会からみると先駆的だったのではないかと思いました。
まとめ
平井一夫氏著「ソニー再生ー変革を成し遂げた異端のリーダーシップ」を紹介いたしました。
本書で平井一夫氏は、「リーダは自社の商品やサービスの一番のファンであれ」と言っておられます。これを「KANDO」という言葉に昇華させ、ソニー再生の合言葉にされます。
これはソニー社員一人一人の熱いマグマ(情熱)がまだまだあることを現場の声を聞くことで感じた平井一夫氏が掲げた合言葉です。
「ソニーの商品が好きだ。ソニーをもっと良くしたい。」というとてもシンプルな想いを社員と共有し再生へに立ち向かわれたのではないかと感じました。
最後に、平井一夫氏は「肩書で仕事をするな」とソニーのリーダーたちに言っていたそうです。肩書は社長であるが、ソニーのいち社員であること従業員に知ってもらうことを心がけておられた平井一夫氏らしい言葉であり、リーダーになった途端部下に対する態度が変わるリーダーでは成果は全く違うものになると仰っておられます。
PCのVAIO事業を手放すなど厳しく辛い判断をされたことも綴られており、「ソニー再生」は消して華々しい美談ではないことがわかります。
ソニーの一ファンである平井一夫氏の情熱を感じられる本であり、失われた30年と言われる日本経済その経済を構成している日本企業の参考になり、かつ鼓舞するような一冊だと感じました。
最後にこの本は、Kindle Paperwhiteを購入し、Amazonの Kindle unlimitedを利用することで出会うことができました。
月額980円(税込)で和書12万冊、洋書120万冊が読み放題なのは破格だと思います。
さらにKindle Paperwhiteを購入したことで月に4~5冊本を読めるようになりました。
Doktor Nakano (@DoktorNakano)